結婚式のシステム開発

情報デザイン。
一見、わかりやすそうでいながら、その実、非常に漠然としていて、つかみどころのないこの言葉が意味することは、一体何なのだろうか?それを、さまざまな実例や方法論をもとに、解き明かしていこうと考えている。
まず初めにことわっておくが、情報デザインという営為は、いわゆるプロの「情報デザイナー」たちだけの専売特許ではない。
情報デザインとは、子どもからお年寄りまで、すべての人にかかわるいとなみであり、コンピュータとネットワークが私たちの身のまわりの環境に急激に浸透しつつある現在、ますますその重要性が増しているのだ。
この本では、多くの人々が仕事をしたり日々の生活をおくる上で必要な考え方や方法を提供してくれる情報デザインについて、その可能性と課題をしめしていきたい。
何の前置きもなく、情報デザインと書いてしまったが、では、私たちはこの情報デザインなるものに、日頃どんなところで出会っているのだろう?実は、私たちは朝起きてから夜眠りにつくまで、膨大な情報デザインに取り囲まれ、生活している。
たとえば、起きた時にまず目にする目覚まし時計の表示に始まり、新聞の紙面やテレビのニュース番組の構成、朝食時のコーヒーメーカーやトースターの操作法。
仕事に出掛ける時に乗る電車のサインや駅の改札機、時刻表。
電車内で目にする車内広告、あるいは車窓の風景、車内にいる他の通勤客たちの装い。
出勤途中で銀行に立ち寄り、ATMで現金を引き出す。
オフィスに着いてからは、パソコンを立ち上げ、電子メールをチェックしたりウェブサイトにアクセスして調べものをしたり、会議資料や企画書をつくったり。
ここまでで止めておこう。
おそらく、一日を丹念に追っていくと、私たちがふだん何気なくやっている行為や見たり感じたりしているモノ・コトのなかに、情報デザインがあふれかえっていることに気づかされるはずだ。
人間が産み出す人工物には、何らかの情報がかならず含まれている。
テレビや新聞などを通じて大量に配信される情報、電話や電子メールなどのコミュニケーション手段を通して交わされる情報のような、メディアの「コンテンツ(中身)」ばかりではない。
家電製品や自動車、自動販売機といった機械・道具と向き合うには、使い方・手順という情報が切っても切り離せない。
駅の案内表示や道路標識のように、空間に貼り付けられた情報もある。
さらにいえば、税金の申告や選挙など、社会制度のなかでも、情報が大事な役目を担う。
スポーツや料理にだって、ルールやレシピといったそれらの行為をなすために欠かせない情報がある。
つまり、非常に大雑把にいうなら、情報デザインとは、こうした人間の活動すべてにかかわる情報を、的確な「かたち」にして表現したり、それを人から人へ伝えたり、多くの人々のあいだで共有したりするための営為である、ということができるだろう。
こうしたさまざまな「かたち」をまとった情報を、私たちはこの身体を使って読み取りながら日々を過ごしている。
そして、私たちは、これらの情報デザインに取り囲まれながら、ただそれらを「使う」だけではなく、自ら情報をデザインしてもいる。
ごく身近なところでは、本棚やクロゼットを整理したり、友人に一本の電子メールを書くときにさえ、私たちは知らず知らずのうちに情報をデザインしている。
それが仕事でパソコンを使って企画書やプレゼンテーションの資料をつくったり、個人の趣味でウェブページをつくるとなると、もはや「プロ」の情報デザイナーと同じ土俵に立たされている、といってもいい。
組織のなかで多くの人々と協同作業する際の、情報共有やコミュニケーションを円滑に進めることだって、情報デザインという側面は色濃い。
身のまわりにあふれる情報洪水に流されないように必死で足をふんばり、そこから自分に本当に必要な情報を取捨選択しょうと苦心惨憺し、他人に何がしかの物事を伝えるのに坤吟した経験をもつ誰もが、「自覚しない情報デザイナー」なのだ。
一九九〇年代以降、驚くほどのスピードで日常生活に浸透してきたデジタル技術(パソコン、デジタルカメラ、インターネット、携帯電話等々)は、個人にかつてないほどの情報の取得や整理、表現、伝達の力を授けた。
かつて、未来学者アルビン・トフラーはその著書『第三の波』のなかで、「生産-消費者(プロシューマー)」の台頭を予見していたが、デジタル技術を手にした個人は、まさにプロシューマーとして振る舞い始めている、といっていいだろう。
だからこそ、情報デザインを理解することは、「情報社会」と呼ばれて久しいこの世の中で賢く生き抜いていくために必須の姿勢になるのではないか、とさえ思う。
だが、実のところ、情報デザインの発想や方法論はまだ十分に根づいているとは言い難い。
日本では特にそんな傾向が強いようだ。
デジタル情報革命で世界を先駆けたアメリカでは、情報技術の革新が急激に進む一方で、その潜在力を十分に引き出し、経済や社会のありようをドラスティックに組み換えていく「技術活用の文化」が成熟していった。
そうした技術活用の文化の根底にあったのも、情報をより的確にとらえ、それをわかりやすく表現し、多くの人々で共有できるような仕組みを具体的な「かたち」に落とし込む情報デザイン的な発想や方法論にはかならなかった。
日本では、デザインというとまだファッションやインテリアといったモノや空間の「見た目」をキレイに飾る行為だと見なす傾向が、一般には根強い。
最近になって、若い世代を中心にコンピュータやデジタルツールを使ってグラフィック(画像)や映像、音楽、ゲームなどを個人レベルで創作するデジタルデザインが熱い注目を集め、それらの専門的なスキルを学ぶ学校に学生が集まっている。
だが、デジタルデザインにしてもやはり見た目のカッコよさが先行しているものが大部分で、本質的なところで情報という目に見えないものに向き合った取り組みはまだ始まったばかりといえる。
ここに来てようやく、ウェブサイトや、その他のインタラクティブ(対話型)・メディアのデザインが、インターネット上の経済活動の盛り上がりとも相まって注目を集めるようになり、しだいにデザイナーの関心が情報デザインへと向かい始めている。
日本では、ようやく緒についたばかりといった印象なのである。
言い換えれば、これからもし、さらに経済活動をはじめ社会の機能のかなりの部分がデジタル化、ネットワーク化されていくとするなら、情報デザインにかかわるスキルやセンスを身につけていくことが、デザイナーにとってばかりでなく、仕事をもつ人々や、日常的に情報メディアにかかわりながら生活しているすべての人々にとって、欠かせない姿勢になってくるだろう。
これからの六つの章では、今まさに着実に実を結びつつある情報デザインの実践や発想のいくつかを取り上げていくことにしよう。
まずは、その手がかりとして、「本棚」や「地図」、あるいは「年表」や「時計」といった、ふだんの生活で見慣れた存在から語りおこしていきたい。
それらの身近な存在が、情報デザインとどう密接なかかわり方をしているのか、そして情報科学の知見や情報技術の成果が、情報デザインをどんな方向へと導こうとしているのかを、見ていくことにしよう。
そして、詳しくは本文で述べることにしたいが、情報デザインとは、実際のところ物事の背後にある見えない関係を発見し、それを組み換えることにはかならない。

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